その日、その日に1人必ず天使がいる
という言葉がある
元々はジムモリソンの詩の一説であるらしい
俺は夕陽が差し込む満員電車に立って乗っていた、目の前には汗臭くて低身長、そして身なりからするに低収入であろうと思われる小汚ないおじさんが座っていた
おそらく席が空いていても小綺麗な女子高生ならその人の隣には座らないであろう。
その日の労働で疲れきり、ひどく疲れた顔で椅子に座っていた。
すると次の駅で小さなまだ3才か4才くらいの天使のようなかわいらしい女の子がお母さんと手を繋いで入ってきた
お母さんは俺の横のつり革を持ち女の子はお母さんのズボンを握ってフラフラと立っている
ああ、何とかわいらしい女の子であろうか本当にまだ地球に生まれて数年、乳臭さすら感じるような天使だ
正面の汚いおじさんは額にはびっしょりとかいた汗を手拭いで拭っている
あらあらかわいそうに俺が席に座っていたらすぐに席を交代して幼き天使を座らせてあげるのに、このおっさん明らかに労働終わりで疲れきっていやがるし絶対に変わらないんだろう
変わってやればいいのにと、そう心の中で思いながら俺は静かに見ていた
おっさんは深く目を閉じ考え込むような顔で眉間にシワと汗を集めている
しばらくったって電車も少し走り出したころおじさんは大きく一息ついて席を立ち上がり席を女の子に譲った
女の子は天使の笑みでありがとうと言って椅子に座った
俺は1人の男が葛藤の末にクタクタの体を何とか立ち上がらせた。ただこれだけの行動に深く感動し思わず笑みがこぼれた。
しばらくいった駅で女の子は電車を降りた
満面の笑顔でありがとうバイバーイと汚い知らないおじさんに手を振りながら
俺は次の駅で降りた、俺もおじさんにありがとうと会釈して降りた
おじさんはキョトンとしていた。
ただ、俺にとっては小さな天使のような女の子ではなくて、この小汚ないおじさんが今日の天使だったのだ。
ここで生きているのも悪いもんじゃないなと思わせてくれた天使だったのだ
汗臭くて低身長で少しテッペンがハゲていて女子高生に嫌な顔で見られてしまいそうなこのおじさんこそが間違いなく俺の今日の天使だったのだ
ながさわらむの酔いどれ天使になる前に
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