北に登って行っていた。
寒い夜の中をトボトボと。
足跡はメクラで見えぬが13マイル。
ウイスキー好きのアマガエル達の声が遠くから聞こえる。
北風に負けた太陽が後ろの夜の月を照らしている。
後は、すべて黄色人種の際限を覗くように自由にしても良いだろう。
遡ること100年と一生と無限と3秒前。
病魔に犯されて全身の細胞が悪玉に変わる夜。
空気中に浮かんでいたのだ。
確かに私はそれを見ることができた。
毛布の中で。押し入れの中で。あるいは大きな鳥の背中で。
私は見ることができた。
ホオジロザメの大群が夜の星の隙間を星座を食べに行く夜も。
雲の隙間の虹色クジラが敗北の砂浜。敗者の極刑の浜。割れた硝子のように細かく煌めく兵者達の夢の跡の浜に打ち上げられて腐っていた午後の風景も。
私は見ることができた。
目を閉じて扉をゆっくりと開けるだけで。
私は見ることができた。
トカゲに産まれて無限も半ばを過ぎて弛みだした時に。
太陽を見つめ返してしまった。
トカゲはメクラのトカゲになった。
トカゲにはあまりに大きかったのだ。
トカゲにはあまりに大きかったのだ。
無言の部屋の隅のホコリ達を喋らせてはならなかった。
いや、というよりも。
話しかけてはいけなかった。
何処かへ通じていたと思っていた知覚の扉は自分の心の限界までへしか続かない。そしてそこまで辿り着くこともできない。
宇宙の外壁は頭蓋骨。
貫けばまた大きな夜と言う名の過去と今と過去と今が広がるだけ。
心臓を神に捧げた少女は無慈悲にも救いの手は死という形でしか与えられなかった。
しかし、どうだろう。君。君に問う。
死だけは遥かに太古から続いてきたような安堵を。
つまり自分には分からない無限を。
いつも無限が広がっている死という現象。
現象という言葉が正しいのかは分からないが。
分からないというところでは生きることと大きくは変わらない。
しかし、全てが分からない死はある意味では無償の愛を捧ぐ唯一の相手なのかもしれない。
生は見えてしまっている死。
死はまだ何も見えない死。
メクラのトカゲの清潔な日記。
混じり気のない無償の愛をペンに。無償の愛で作られた古くからの。
窓辺にやってきた白頭鷲。
枕元にやってきたフクロウ。
薄っぺらな墓を掘っていた背広の男。
一生の汗を注いだ薄っぺらな墓。
丘の上の上の上の処女の少女にキスを願った人間。
処女の内壁はクエスチョンマークの精液で満たされていた。
メクラのトカゲを分からないことだけを知っていた。
メクラのトカゲは素晴らしいものしか食べない。
それは空気中に点在しているようでしないモノ。
メクラのトカゲが君の動脈に注がれたなら君も悪玉に反転するだろう。
全ての絶望の夜を闊歩する酔いどれた天使達に告白してこのトカゲの一生は終わるだろう。
永遠の折り返し地点にその先についての手紙を置いておく。
そこに答えはあるであろう。
ながさわらむの酔いどれ天使になる前に
メモ帳
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