白い布を被った旅人

僕はカーロ・マルクスにいちど、膝突合せてそれぞれ椅子に座って顔見合せて奇妙なアラビア人みたいなやつが砂漠を追いかけてくる夢をよくみるんだ、と話した。

そいつから逃げたいんだ。

しかし、「守ってくれる街」まであと少しというところで追いつかれてしまう。

「誰だいそれは?」とカーロは言った

2人して考えた。

ぼくは、白い布を被った僕自身かな、と言った。

そうじゃないだろう。

なにか、だれか、精霊みたいのが人生という砂漠を進むおれたちみんなを追いかけてきて、天国までもう一歩と言うところでつかまえるんだよ。

もちろん、今振り返ってみると、それは要するに死だ、とわかる。

死が、天国の手前で追いつくのだ。

ぼくらには生きているあいだ求め続けてるものがひとつあって、それが溜め息や嘆きやさまざまな甘い吐き気の原因になっている。

それは子宮のなかで味わっていたにちがいない失われた至福の思い出で、それがふたたび得られるのは(みんなは認めたくないのだが)
死のなかでだけなのだ。

でも、いったいだれが死にたいと思うだろう?

こんなことを、いろんなことが目まぐるしく起こるなか、ぼくは頭の隅っこで考え続けていた。

ディーンに話したら、ピュアな死への願望だよ、とあっさりかたづけられた。

二度生きられるやつはいない。
おれには関係ないね。

ぼくは同意するしかなかった。

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