夢で責任がはじまる

映っているのは画面にひっきりなしに小雨が降りしきる古いサイレント映画だ。若い男が女の家を訪ねる。男は僕の父、女は母だ。父は母を連れ出す。電車に乗って遊園地へ出かけるために。ふたりは海岸を散策し、メリーゴーラウンドに乗り、日が暮れてレストランに入る。そこで父は母に結婚のプロポーズをする。母はうれしくて泣き出してしまう。僕は席から立ち上がり画面に向って叫ぶ。結婚しちゃいけない、と。結婚してもいいことなんか何ひとつないんだ。後悔と憎しみとそして最悪の子供が待っているだけだ! 僕は隣席の人にたしなめられて席に坐りなおす。父と母は写真屋で記念写真を撮る。写真屋の手筈が悪くて父は苛々して呶鳴る。ふたりはぎくしゃくし始める。母が占い小屋に入ろうという。父が反対し口論になる。母に引っぱられるようにして中に入ると、怪しげな占い師が出てくる。父の我慢が限度に達し、母の腕を取って外へ出ようとする。だが母は動こうとしない。ついに父は母を置き去りにしてそこを立ち去る。母は占い師に引き止められてそこに佇んだままだ。僕は恐怖に襲われて席を立ち、画面に向って叫ぶ。何をやってるんだ、お前たちは!自分のやっていることがわかってるのか、と。僕は映画館の男に引きずり出される。男は僕に向っていう。何を喚き散らしてるんだ。お前こそ何をやっている。自分のやるべきことをやらないとあとで後悔するぞ。自分の責任は自分でもつんだ! 僕は映画館の外へ放り出される。そして目がさめる。身を切るような冬の朝、僕の二十一歳の誕生日だ。朝はもう始まっている。

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ながさわらむの酔いどれ天使になる前に

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